本物を追求する人々

2015.02.02 Update

心に届くのは本物の思いだけ

ウェッジグループオーナー澤田升男×映画監督 入江富美子

澤田升男 PROFILE
1963年、岐阜県生まれ。自然素材住宅やオリジナル断
熱工法を提供する会社を設立し、会員工務店800社を
育て、建築界の風雲児と呼ばれる。現在は建築コンサルタ
ントとして後進の指導にあたりながら、「本物の家づくり」
を啓蒙する活動を行っている。講演は年100回を超える。

入江富美子 PROFILE
2005年、未来の子どもたちに「あなたのままで大丈夫」
というメッセージを残したいとの思いから一念発起し、
主婦兼映画監督の道に入る。監督デビュー作「1/4の奇跡
~本当のことだから~」(2007年)は現在までに1300回、
海外16カ国で上映され14万人を動員している。

 

何も知らなかったから問題を乗り越えられた

澤田 僕の仲間が入江監督の映画「1/4の奇跡」に出演した縁で、僕も入江さんと知り合うことができました。映画の完成は6年前ですが、映画を観て感動した人たちが、「自分のまわりの人にも観せたい!」と、自主上映の形で広がり、今では世界16ヵ国、
14万人を動員し、今もその輪が広がっていると聞きます。実は、僕もその一人。「神様が宿る家」をつくる仲間たちと一緒になって、今夏から各地域で上映会を開いているところです。
入江 ありがとうございます。澤田さんは少年ぽい雰囲気があり、初めてお会いしたときから、不思議と懐かしさを感じています。この映画を気にいってくださり、純粋な気持ちで広めてくださっているのが伝わってきて、とてもうれしいです。
澤田 しかし、映画製作の素人だった入江さんが、なぜそのような境地に至ったんですか?
入江 私もまさか自分が映画監督になるなんて夢にも思っていませんでしたが、あるとき、「ありのままの自分を受け入れて、感謝のあふれ出す映画をつくろう!」という思いがワーッとわき上がってきたんです。それまで自分のことを好きだと思ったことは一度もありませんでした。それを隠して、仕事のキャリア、結婚、出産と、目に見える幸せを求めてきました。
でも、外側をどんなに飾っても「自分はダメだ」という寂しさがあった。ところが、そのときはなぜか、「ダメな自分でいいから、これをやりたい!」という気持ちになったんですね。しかも、ホームビデオがあれば映画が作れると100%思い込んでしまった(笑)。資金が要るとか、マイクや照明が要るとかを、知らないからこそできたようなもので、これだ!と思った瞬間、問題を問題とも思わずに、前に突き進むことができたのだと思います。

 

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作為的なものに人は心を動かされない

澤田 今のお話を伺うと、無欲の勝利というか、観ている僕たちに入江さんの思いがストレートに伝わってきた理由がわかりますね。今の世の中は、感動を狙ったものが多いですが、作為的に感動をお皿に盛られて、「はい、どうぞ」と言われても、本物じゃないものに人の心は動きません。一瞬は感動しても、すぐに忘れてしまいます。入江さんの映画にはウソがないからこそ、多くの人が感動し、自主映画にもかかわらず、これほど世界に広がったのだと思います。僕らも〝1ミリもウソの無い家づくり〞をやっていて、これが本物だとわかってくれる人がいるから、今、全国に「神様が宿る家」が広がっているのだと思いますし、分野は違いますが、そこに入江監督との共通点を感じます。
入江 それは本当におっしゃる通りだと思います。実は、私も余計な思いに引っぱられていた時期がありました。それまでの自分が「いいか」「悪いか」「できるか」「できないか」の2つの世界を生きてきた人間だったので、映画を作っている最中も、ついつい感動させたいとか、作為的に泣かせて「いい映画だね」と言わせたい、そうやって結果を出そうとしたんです。
でも、映画にもご出演いただいた伊勢修養団の中山靖雄先生が、いいか悪いかじゃない、「いい風に」という世界があることを教えてくださって。その言葉を思い出しながら、2極の世界から抜け出し、思いだけを込めていくことができました。
澤田 僕も先日、中山先生にお目にかかったのですが、すべてに批判がなく、あるのは許しだけ。先生のそばにいるだけで、今までの苦しかったこと、顔に出さずに笑顔でがんばってきたことをすべて包み込んでくれる安心感がありました。その場で泣き出してしまう人もいましたね。
入江 先生は、人はみんな作為的なものに人は心を動かされない尊い、生まれてきただけですごい存在なんだという根本のところで相手と接しられるので、一緒にいると余計なものがどんどん外れていくんでしょうね。
先生にもう一つ教わったのは、世間的に正しくても間違っていても、自分が「これだ!」と思ったら、その思いを信じて進むことです。映画の完成試写会を「1000人の会場でやりたい」と言ったとき、まわりは大反対でした。だって、無名の素人監督の作品で、そんな大きな会場が埋まるわけがない、少なかったらかえってカッコ悪いよって。でも、自分の中からわいてきた思いを疑わず、活動していったら、いろんな人に助けられて、結局は1000人の会場で立ち見まで出たんです。人生は常に選択の連続ですが、自分から出た答えを選び続けると、人の計算ではなく、天の計算が「いい風」に働いてくれるのではないでしょうか。

 

すべてのものに作り手の心があらわれる

澤田 最新作の「天から見れば」は国連で上映されたそうですね。こちらも、「自分を大切にしたとき、初めて人のことも大切にできる」という入江さんらしいメッセージが伝わってくる作品で、恥ずかしながら号泣しました。
今後、これらの作品を全国各地で上映していきますので、読者の方にも楽しみにしていただきたいのですが、さらに社員教育、現場教育にこの映画を使わせてもらいたいと思っているんです。みんな大工の姿で生まれてきたわけじゃない。まず人間としてどういう心を持つべきか。そのことを考えさせてくれる映画だと思います。
入江 その話で思い出しました。ある京都の染め物屋さんに聞いたんですが、染めには作り手の心があらわれるそうです。工程はまったく同じなのに、夫婦ゲンカしたあとだと冴えない色しか出ない。家も同じではないでしょうか。今の自分がどんな思いで家を建てているのか、この映画を通してもう一回見つめてもらう機会になれば、これほどうれしいことはありません。
澤田 映画の力というのは本当にすごい。今日はありがとうございました。

 

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