本物を追求する人々

2015.05.01 Update

いのちの質的向上を目指す宿 「WaRa俱楽無」

「WaRa俱楽無」/船越 康弘

世間の称賛よりよき夫、父親でいたい

幼い頃から病弱だった私は、20歳のとき、「食べ物を変えると人生が変わる」「食べ物にありがとうと言おう」という桜沢如一氏の言葉に感銘を受けて玄米菜食を始め、その後、料理と人生の師である小川法慶氏に出会い、大きく世界が変わりました。
自然食料理人になり、1986年、岡山県の山奥で自然食の宿「百姓屋敷わら」をスタート。完全無農薬の野菜づくりも始めました。
ところが、最初の半年間はお客様ゼロ。でも、妻と2人、「いつかお客様は必ずくる」と信じていたんです。その想いが通じたのか、少しずつ口コミでお客様が増え始め、その半年後には年間3000人もきてくださる宿になりました。
自分でも信じられないことですが、気がついたときには何冊も本を書いていて、年に100回以上も講演で全国を飛び回り、先生と呼ばれていました。でも、2000年、もっと大切なもののために、日本での生活をすべて捨ててニュージーランドに移住することにしたんです。
それは家族。私は、自分が外でスポットライトを浴びるより、まずよき夫、よき父親、よき料理人でありたいと思ったのです。3人の子どもたちがニュージーランドに留学することになり、私たちも一緒に行くことにためらいはありませんでした。
7年間のニュージーランド生活で得た気づき。それは、日本の伝統食を始めとするジャパニーズオーガニックライフ(日本的有機生活)の奥深さを再認識したことです。
再び日本に拠点を移し、5年前にオープンした生活提案型の宿「WaRa倶楽無」。「ただそこにいるだけで癒やされ、幸福感に満ちてやさしくなれる空間」を実現するため、2つの客室に絞り、精一杯のおもてなしをさせていただいています。

 

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環境に負荷をかけず環境と調和する家

建築の基本コンセプトは、「可能な限り環境に負荷をかけず、環境と調和する家づくり」。この建物を建てることで永続可能な社会を実現し、この建物に住むことで健康が育まれるような、ライフスタイル提案型の宿をつくったつもりです。
私は料理人ですが、実は、料理と同じぐらい木を触ることが好き。地元の岡山はもちろん、いい木があると聞けばどこでも出かけて行って、さまざまな種類の材木、古材を集め、自分でも製材して、木の個性が調和しあうような家をつくろうと考えました。土、石、ガラスなどとの調和も図り、未来に残したい日本の伝統技術や伝統工芸もあますところなく用いています。
出来上がった建物はデザイン重視ではなく、機能重視。非常にオーソドックスなつくりですが、お客様がこの宿で初めて手を触れる階段の手すりには、300年前のけやきの古材の一番固いところを、一段ずつ踏みしめる階段の段板は厚みを6㎝にして、安心感を全身で認識していただけるようにしました。
もちろん、将来、解体してもほとんどすべての素材が自然に還るものを使っています。この家はおそらく200年、7代先までもつでしょう。子孫も200年間、住宅ローンに追われることはありません。これこそ未来へのギフトではないでしょうか。

 

空気は食べ物の6倍の影響力がある

健康と環境が調和したジャパニーズオーガニックライフともいうべき宿で、私たちは「重ね煮」という野菜の調理法を基本にした自然食料理をお出ししているわけですが、私が建物にこれだけこだわる理由は、食事よりもっと大事なのは家の中の空気だと思っているからです。
多くの生理学者たちが「健康に寄与する要素は、環境が50%、遺伝子が20%、食事が30%」と言うように、食事が健康に大きくかかわっていることは間違いありませんが、その中には空気や水も含まれてのこと。ただし、食事は数週間食べなくても、水さえあれば生きられます。ですから食べ物より水のほうが大事だと、「WaRa倶楽無」で使用する水は徹底的にこだわって、3段階の工程を経た安心・安全な水を使用しています。でも、空気はその水よりずっと大事。なぜなら、人は空気がなければ生きることはできないからです。
しかも、私たちは毎日の食べ物・飲み物の総量に対して最低でも5.5倍、多い人では7倍もの空気を吸っています。一日2㎏食べる人なら軽く10㎏以上の空気を吸う計算になるわけです。
そうだとすれば、食べ物の5倍、6倍の体への影響があって当たり前。それだけの影響力があるところに、私たちは住んで、寝ているということです。
壁にビニールクロスを貼り、ペンキを塗り、合板のフローリングを使い、家中の壁、天井、床からホルムアルデヒドなどが出ているよどんだ空気の中では、無農薬の自然食や無添加の料理を食べても、効果は薄れてしまいます。さらに言えば、今の日本の家の耐用年数は平均28年。そのほとんどが新建材なので、最終的にはゴミの山をつくっているようなものです。
空気を最高の環境にすることが、私たちが幸せで健康になる一番の近道だと、ぜひ覚えておいてほしいと思います。

 

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主体性を持って家にかかわってほしい

こうした環境で自然の恵みをたっぷり受けた野菜を思う存分召し上がっていただき、自慢のお風呂で体を癒やしていただくと、みなさん翌日は驚くほど元気になって帰って行かれます。
病気で苦しんでいる方がこられることも多いですね。あるとき雑誌に「この宿で子どものアトピーが改善した!」という記事が載り、一時期はアトピーでお困りの方が、子どもさんを連れて大勢相談にこられました。
しかし、「家の中でできるアレルギー対策や食事療法を指導してほしい」とおっしゃる親御さんたちに、私は「食事も大事。でも、それよりもっと大事なのは、お子さん自身に『自分は両親にじゅうぶん愛されている』と実感させることですよ」とお話しています。
私に言わせれば、病気の本当の原因は親がつくりだしています。自分たちの不規則な生活習慣に子どもを巻き込んでいませんか? 子どもの前で夫婦ゲンカをしていませんか? 毎朝、早起きして、手をつないで一緒に歩く習慣をつける。子どもの前で夫婦仲良くする。夜は早く布団に入る。それだけでも子どもの精神状態は安定し、体の状態も今より落ち着くはずです。
しかし、それでもよくならない子が最近増えてきたのはどういうわけだろう……と思っていたら、新築に引っ越した子が多いことがわかりました。いわゆるシックハウス症候群です。
これから家を建てようとお考えなら、業者任せにせず、家について真剣に勉強してほしいと思います。本気になれば、それほどコストをかけずにこの家レベルのものはつくれます。家は「買うもの」ではなく、「つくるもの」。自分がいかに主体性を持って家づくりにかかわるかで、いくらでも生活の質を向上させることはできるはずです。

 

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最高の わが家 で命を輝かそう

WaRa倶楽無の裏山にある森は、全部で10町歩(ちょうぶ)ほど。2つの畑でさまざまな野菜、小麦、そば、大豆などを育てているほか、自分たちで山の木を切り、コツコツ整備してお客様が散歩できるような散歩道をつくりました。お客様にとっては、まさにプライベートマウンテン(笑)。誰にも邪魔されず、四季折々の森の色彩に包まれ、大いなる命の息吹を五感で感じていただけます。
目指しているのは、日本で失われてしまった里山の復活です。暮らしの中で無理なく山の資源を循環活用させ、持続可能な生活を送る実践をしています。
伐採した木の一部を乾燥させて製材し、木と土だけで家を手づくりしようという計画もあります。薪でおいしいご飯を炊いて、暖房がついて、太陽光発電で電気がつく自給自足生活、いいでしょう(笑)。そんな夢を持ちながら、ワクワクして自分の内なるエネルギーが満たされているから、お客様にも最大限のエネルギーが注げるんです。
これから家を建てる人も、自分のために最高のわが家を建ててください。
20年後の理想の暮らしをイメージし、その生活空間に投資したらいい。それでこそ、命が輝くと思います。

 

自然と調和しながら、おいしい野菜を食べて、きちんと休む。
ここには本物のぜいたくがある

 

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WaRa倶楽無

〒716-0212
岡山県高梁市川上町下大竹2085
☎0866-48-3243

http://wara.jp/

■1泊2食・・・1名様 2万5200円(税込)
チェックイン  15:00
チェックアウト 10:30
定休日 月・火曜